【芸能】西田敏行の“遺作”映画が「何度観ても泣けてしまう」ワケ。どんな悪役も「愛して演じる」ことの効果

【芸能】西田敏行の“遺作”映画が「何度観ても泣けてしまう」ワケ。どんな悪役も「愛して演じる」ことの効果

演技者としての西田敏行さんの真髄が感じられる。悪役すらも愛することで、彼の演技はただの演じるのではなく、心の底からの表現に昇華されています。

『劇場版ドクターX FINAL』が12月6日に公開され、3日間で観客動員44万1421人、興行収入6億387万8700円を記録(12月6日~8日・興行通信社調べ)しました。大人気ドラマシリーズのファイナルとして注目されるとともに、今年10月に亡くなられた俳優・西田敏行氏の遺作となった作品でもあります。

画像:『劇場版ドクターX FINAL』公式サイトより

◆涙なくしては観られない、完結編の“蛭間”西田敏行
本作は2012年からテレビ朝日系列で放送され、米倉涼子演じるフリーランスの凄腕外科医・大門未知子の活躍を描いた医療ドラマ『ドクターX外科医・大門未知子~』の劇場版。大門未知子のルーツから、師匠・神原晶(岸部一徳)との絆に外科医としての在り方まで、壮大なスケールで描かれており、見応えたっぷりに描かれています。

テレビシリーズを何度もリピート視聴するほど『ドクターX』ファンである筆者も、既に2回劇場に足を運びましたが、2回とも涙なくしては観られませんでした。それはストーリーもさることながら、西田氏の演じる“蛭間重勝”が変わらずに存在していたことが何よりも大きかったです

蛭間重勝は、物語の舞台となる東帝大学病院の元病院長で劇場版では会長。ドラマ版では第2シーズンから登場し、大門未知子とは相対するいわばラスボス的存在です。表向きは温厚ですが、とにかく権力が大好きで、女癖も悪く、腹黒い。欲と野望にまみれ、権力抗争に明け暮れではかなり腹黒く、患者の命を利用するような冷徹な面すら持ち合わせています。悪~い役ですが、西田氏が演じるとどうしたって憎めない!『池中玄太80キロ』シリーズや『釣りバカ日誌』シリーズなど数多くの代表作をもつ西田氏ですが、晩年の当たり役の一つがこの“蛭間重勝”ではないでしょうか。

◆私利私欲に走る悪役も、大きな心で愛して演じる
“いい人”的な役回りが多いイメージの西田氏ですが、もちろん皆さんご存知の通り、実に幅広い役どころを演じてきました。蛭間は完全にヒールの役でしたが、前述したとおり西田氏によって愛すべきキャラクターに仕上がっています。とても、“人間くさい”。

人間だから失敗することも、私利私欲に走ってしまうことも、言うことがコロッと変わってしまうこともある。西田氏はそんな“人間くささ”を、否定することなく大きな心で受け止めて、役を心から愛し、演じているのではないでしょうか。だからこそ、どんな役であっても、観る者は西田敏行という人間の大きさを感じずにはいられないのです。

今回も蛭間重勝として、生き生きと企み、麻雀をし、恫喝し、泣いて、笑って、すっとぼける姿で楽しませてくれました。西田氏アドリブ演技が多いことでも有名だったので、どこからどこまでがアドリブなのか? もはや全部がアドリブなのではないか? とすら思わされます。

劇中で、蛭間と同じ病院で働く医師・加地秀樹(勝村政信)が「蛭間名誉会長は、ずっと死なない気がします」と軽口を叩くシーンがありました。そんな蛭間を演じる西田氏が亡くなったことが、未だに信じられない気持ちです。改めて、偉大すぎる俳優さんだったと強く感じました。

◆自ら歌い上げた応援歌「唯一無二」が最高!
蛭間が愛してやまない東帝大学の応援歌「唯一無二」は、「ゆ・い・つ・む・に~」と始まります。これまでにもドラマで何度か、その美声で応援歌を披露していましたが、劇中でも1番を熱唱。映画館に響き渡る西田氏の歌声は、また格別でした。もう新しい作品で、彼を観ることができないと思うと寂しさが募るばかりですが、劇中のセリフどおり『ドクターX』の世界で、ずっと生きていてくれる気がします。

西田さん、あなたこそ“唯一無二”の存在です。

西田敏行『バカ卒業~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~ Kindle版』

<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>

【鈴木まこと】雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

西田敏行『バカ卒業~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~ Kindle版』

(出典 news.nicovideo.jp)

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