ある日、自分の“推し”が性加害者になる──。元SMAPの中居正広さんが起こした女性とのトラブルによって、被害者はもちろん、多くのファンも苦しめられている。誰もが推しを持つ時代、その“リスク”について考えてみたい。
「彼に関するグッズをなかなか捨てられずにいました」
そう打ち明けるのは、SMAPを長年応援してきた40代女性だ。小学生のころにSMAPのドラマデビュー作「あぶない少年3」(1988年)を見て、すぐファンになった。年を重ねるなかで離れた時期もあったが、2000年代には再び夢中に。コンサートはもちろん、撮影のエキストラなどにも足しげく通った。
2016年の解散騒動のあとも変わらず応援し続け、部屋にはCDやDVD、うちわなどが並ぶ。だがここ数カ月は、思い入れのあるグッズを見るたび複雑な感情が浮かぶようになった。
発端は、メンバーの中居正広さん(52)が女性と食事をした際に深刻なトラブルが起きたという昨年12月の週刊誌報道だ。
「推しが“加害者”になったかもしれない」
想像もしなかった出来事に、ファンの間にも動揺が広がった。一方で、当時はまだ半信半疑の人も多かったという。女性はこう振り返る。
「SMAPの解散をめぐる過去の騒動もあって週刊誌を敵視しているファンも多く、信じていない人がほとんどだったように思います。レギュラー番組も放送されていたため、『どうなるのか』と不安に思いながらも、『番組が続いているのなら大したことではない』と思おうとしていたのかもしれません」
ファンの願いとは裏腹に、その後も報道は続き、年が明けた1月8日には「だれかtoなかい」の休止が発表。ファンの間でも「まずいことになったのでは」という思いが広がった。
状況がさらに大きく動いたのは、中居さんが声明文を出した9日のことだ。声明には、
<トラブルがあったことは事実です。そして、双方の代理人を通じて示談が成立し、解決していることも事実です。解決に至っては、相手さまのご提案に対して真摯に向き合い、対応してきたつもりです。このトラブルにおいて、一部報道にあるような手を上げる等の暴力は一切ございません。なお、示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました。>
という言葉がつづられていた。女性は言う。
「私は『手を上げる等』以外の暴力を否定しなかった時点で、それ以外の暴力はあったのだろうと認識しました。『芸能活動についても支障なく続けられる』といった文にも、『自分の行いを反省していないのでは』という疑念を持ちました」
■女性が送った「反省を促すメッセージ」
“推し”の性加害。考えたくもないことだったが、この状態が続くうちは以前のように応援はできない。そう思った女性はファンクラブサイトから中居さんに反省を促すメッセージを送った。異を唱えるメッセージを発信することは、「とても勇気がいることだった」が、長年応援してきたファンだからこそ言わなければいけないことだとも考えた。
略
■ファンをたきつける“部外者”の存在
女性自身も報告書を読むのに5日間ほどを費やし、そのたびに心が揺れ動いた。復元された中居さんとフジテレビ編成幹部(当時)とのメールのやりとりには特に苦しさを感じ、強い不快感を抱いた。ファンのなかには、ショックのあまり入院した人もいたという。
だが、今回の件で最も傷つけられたのは、言うまでもなく被害女性だ。取材に応じた女性も、「被害女性を批判するファン」の存在を懸念する。
「第三者委員会こそ性犯罪者であるとまで言い切ったファンもいます。無批判に彼が悪くないと思いこむことのほうが楽だと思いますが、彼がテレビで見せてきたのはほんの一面にすぎず、見せていない部分のほうが圧倒的に多い。特に彼はSMAPの中でも自分の話をほとんどしない人でした。トーク番組のMCをすることはあっても、自分がゲストになり話を聞かれる機会が圧倒的に少なかったからです」
また、SNSには、中居さんを信じたいファンを擁護することでフォロワーやインプレッションを稼ごうとする“部外者”も目立ち始めた。それにたきつけられ、発言が過激になっていくファンを見ていると、こんな不安がよぎる。女性は言う。
「被害女性への二次加害はあってはならないし、いつかファンから逮捕者が出るのではないかと心配です」
AERA
https://news.yahoo.co.jp/articles/626c5f46293a1e701b113c5d0d57c80cd3b7071e?page=1