再放送が儲からない理由
「踊る大捜査線」(1997年)、など主にドラマの再放送を流しているフジテレビの「ハッピーアワー」(第1部午後1時50分、同2部同2時48分)が、高視聴率を獲得し、局内が沸いているという情報が流されている。しかし社員に話を聞くと、そんな事実はない。フジに限らず、再放送はちっとも儲からないからである。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
再放送はどんなに高視聴率を得ようが、儲からない。仮に儲かるのなら、各民放はプライム帯(午後7~同11時)まで再放送だらけにするだろう。
なぜ、儲からないのか。その理由はシンプル。たとえば、プライム帯で制作費3000万円の1時間ドラマをつくると、局にはスポンサーから1億円以上のスポンサー料が入る。
スポンサー料が高額になるのは制作費が含まれているから。スポンサー料が高額だと、局が得るマージンも多くなる。
ところが、再放送は制作費がゼロだから、高額のスポンサー料を受け取れない。支払うスポンサーもいない。マージンも安くなる。
「再放送での売上高は通常の番組のせいぜい10分の1程度」(民放幹部)
昨年度のCM売上高が約2192億7500万円で民放トップだった日本テレビの場合、2014年以降は社の戦略として再放送をやらない。利益が少ないからだが、もう1つ理由があるという。
「再放送はステーションイメージが良くならない」(日テレ関係者)
過去の番組を流していると、局のイメージが古ぼけたものになってしまうと日テレは考えている。
昨年度のCM売上高が約1593億円で3位だったTBSには、民放随一の豊富なドラマのストックがある。けれど、やっぱり2015年以降は再放送をやらない。これも儲からないのが最大の理由である。
(略)
再放送以外のことでも誤解が広まっている。TVerに関することだ。まるで民放の新たな収益の柱になったという情報が流されているが、これは誤り。
TVerのCM売上高は各局とも地上波のCMの20~30分の1程度に過ぎない。TVerの売上高はもともと少なかったので、右肩上がりで伸びているが、地上波のCMの売上高に近づいたり、逆転したりすることは構造上、あり得ない。
その訳は再放送が儲からない理由と似ている。TVerの番組の制作費を出しているのは地上波のスポンサーだからである。
地上波のスポンサーがプライム帯でネットタイムCM(番組の提供スポンサーが全国で流すCM)を出すと、30秒のものが26本で4000万円~3億円程度する。ここから制作費が出る。
同じく地上波のスポンサーが買う15秒のスポットCM(番組と番組の合間などに流れるCM)は1本当たり75万円~100万円以上。比較的安いようだが、1本単位では買えない。基本的に1週間以上での契約だから、合計数百万円~3000万円以上になる。
一方、TVerにCMを出すための最低費用は50~100万円程度。番組の制作費を負担していないのだから、当然である。だから大きくは儲からない。
そもそもTVerはやや過大評価されている嫌いがある。まず認知率はまだ72.5%にとどまっている。(15~69歳、2024年1月、マクロミル調べ)。誰もが使っているわけではない。
また、コネクテッドTV(ネット回線に接続されたテレビ)経由での番組の完再生率(番組が最後まで再生される率)は71%。パソコン、スマホを利用しての完再生率は約60%。(2023年12月発表、TVer調べ)。最後まで観ない人もかなりいる。
再生数ランキングも額面通りには受け取るわけにはない。まずTVerは世代によって利用率にかなりばらつきがある。また、視聴率が高い番組ほど再生数が少なめになるからだ。リアルタイムで観た人がTVerでまで観ることはあまり考えられないから、当然だ。
全文はソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/9b074fde1633ecc12eb72009bc1f760d4b62c40c